駆け込み移籍の「Who Are You?」
「アントニー・マルシャルって、誰?」
同僚のフランス代表MFモルガン・シュナイダルランにそう尋ねたのはウェイン・ルーニーだ。去る9月1日、夏の移籍最終日に3600万ポンド(活躍次第で最大5800万ポンドとも!)という破格の移籍金でモナコから加わり、いきなり背番号9を与えられた19歳のフランス人ストライカーのことを、ルーニーはまったく知らなかった。
この夏も、風物詩となった移籍期限ギリギリの“駆け込み”で多くの新顔たちが渡英してきた。もちろん、彼らがどんな選手なのかは実際にプレーを見るのが一番だ。しかし、その前に基礎情報や前評判を抑えておいても損はない。
まずは、そのマルシャルだ。「世界最高額のティーンエイジャー」として一躍“時の人”になった彼は、数々の名アタッカーを輩出してきた名門リヨン・アカデミーで14歳から実力を磨き、各年代のフランス代表に名を連ねてきた若き才能。シュナイダルランがルーニーに答えた言葉を借りるなら、プレーは「ティエリ・アンリに似ている」らしい。
ただ、彼はリヨンで3試合、13年夏に移籍したモナコで49試合ほどリーグ・アンを経験して11ゴールを決めただけで、フランス代表にもこの9月にデビューしたばかりに過ぎない。今回の移籍金はフランスのジャーナリストいわく「言葉も出ない」ほどの驚きだったそうで、「まだ荒削りで、どれくらいやれるかは我々フランス人にもわからない」のだとか。金額がいきなりの活躍を保証してくれるわけではなく、ある意味ギャンブル補強とも言えそうだ。
王者チェルシーにも、「誰?」とささやかれる新センターバックが加入した。フランスのナントから推定400万ポンドで加わったセネガル代表の26歳、パピ・ジロボジである。19歳で母国からフランスへ渡り、リールの入団テストに落ちて4部リーグからスタートを切ったジロボジは、2部時代のナントで名を売り、リーグ・アン屈指のDFに上り詰めた。英『スカイスポーツ』によれば、スピードがある左利きのセンターバックで、アグレッシブかつ空中戦にも強い典型的な“プレミア向き”のようだ。また、アフリカで対戦歴があるヤヤ・トゥレが「左右両足をあんなにうまく使えるDFはそういない」と評しているのも気になるところ。デビュー戦ではその辺りにも注目したい。
最後は、首位を走るマンチェスター・シティーの新兵器、ベルギー代表MFケヴィン・デブライネ。ブンデスリーガでシーズン歴代最多アシストをマークした当代屈指の司令塔であり、ヴォルフスブルクからクラブレコードの5500万ポンドで加わったMFに「誰?」と言うのも失礼な話だが、実は英国人のイメージは「チェルシーの失敗作」で止まっているのだ。
2014年1月までチェルシーに在籍したデブライネだが、そこではレギュラーの座をつかめなかった。ジョゼ・モウリーニョ監督は当時の彼を「ガキだった」とバッサリ切り捨てている。
「競争する準備ができていなかった。毎試合プレーしないと練習でモチベーションが上がらないと言い、練習態度がとても酷かった」。
モウリーニョにそう言われ、愛想を尽かされた天才MFが彼を見返すには、ビッグクラブ再挑戦を成功させる以外に道はない。
インターナショナルマッチウィークを挟んで再開する今週末のプレミアリーグには、ルーニーでなくとも「誰?」と思うような新顔から久しぶりの顔まで様々なニューフェイスが並ぶ。彼らにフォーカスしてゲームを観戦してみるのも楽しそうだ。
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